『メモの魔力』を『HUNTER×HUNTER』で解説する

こんにちは、taikiです。

漫画で読み解く有名な本シリーズが好きな皆様、大変長らくお待たせしました。

多数のリクエストを頂き、プレッシャーを(勝手に)感じていた『HUNTER×HUNTER』です。

今回は女優である石原さとみさんの元カレとして有名、いや違った、50万部超のヒット作、前田裕二著『メモの魔力』を取り上げます。

アウトプット術、思考法に関する本ですが、読めば読むほど『HUNTER×HUNTER』です。

「だったら、『HUNTER×HUNTER』でいいじゃん」という気もしてきたので、思い切ってそうしちゃいました。

まだ読んでいない人は読まずして理解し、既に読んじゃった人はこの記事を読むことによって記憶への定着を促して頂ければ嬉しいです。

やや長文になりますが、お付き合いください。

ザックリ理解する『メモの魔力』

著者情報

著者:前田裕二(まえだゆうじ)
生まれ:1987年東京生まれ
所属:SHOWROOM㈱ 代表取締役社長
略歴:早稲田大学→UBS証券→DeNA→SHOWROOM

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若い頃に親に先立たれて、ご苦労されたようです。その時の体験が今の前田さんの根幹を作っているようですね。

詳しい紹介は他に譲りますが、元カノが有名なだけの人ではありません!

目次と本書の全体像

まずは目次を見て全体像を捉えましょう。

この本は前半と後半でメッセージが異なります。

前半が具体的なメモの仕方とその活用方法といったテクニック的な話。

本のタイトルから想像・期待するストレートな内容です。

後半は、そもそも何のためにメモのテクニックを学ぶのかその本質的な部分から考えようという内容です。

実用的な前半とややとっつきにくい後半という構成になります。

『HUNTER×HUNTER』で読み解く『メモの魔力』前半

『メモの魔力』の前半部分を解説した上で、具体的なわかりやすい事例として『HUNTER×HUNTER』を重ね合わせて読んでいきましょう。

前半要約:メモを通じたアウトプット術を身につけよう

前半のパートをザックリ要約すると↓です。

メモを通じて自己理解・思考整理して、有益なアウトプットにつなげよう

決して忘れないために記録を残すメモしようという話ではありません。

具体的には、見開きのノートを左側のページを「ファクト」、右側を2つに分けて「抽象化」と「転用」の3つの欄にします。

ノートの左側から順に以下のように書き出していきます。

  • 右側に客観的事実(ファクト)を書き出す
  • 左側の半分にそのファクトを抽象化して導き出される法則的なものを書き出す
  • 残りの半分に自分が転用する先を書き出す

図解するとこんな感じ。

左側のページは記録としてのメモ、右側は思考した結果のメモです。

とにかくメモを書きまくって、ファクトから示唆を捻り出して、どうやって応用するかを記録として残します。

確かにこれを毎日積み上げていたら、何かを成し遂げられそうな気がしてきました。

ん??

そんなこと言われてもよくわからないから具体例で説明してほしい??

こんな時は俺達の『HUNTER×HUNTER』の出番だ。

実際に、ゴンとキルアが使ったと思われる『メモの魔力』を見てみましょう。

ストーリーはヨークシンシティ編のゴンとキルアです。

ストーリーを知らない・忘れた人のために

まずは、前提を共有しておきます。

ストーリー概要
ゴンとキルアは、オークションに出品される「Greed Island(以下G.I)」というゲームを求めてヨークシンシティにやってきました。

『HUNTER×HUNTER』8巻より(C)冨樫義博/集英社

「G.I」はとっても高価で落札するにはお金が足りません。

ゴンとキルアは露店で安値で出品されているお宝を転売して賞金稼ぎ試みました。そこで知り合ったゼパイルに木造蔵にまつわる話を聞きました。

↓ゼパイル

『HUNTER×HUNTER』10巻より(C)冨樫義博/集英社

また、ゴンとキルアは幻影旅団という盗賊団に懸賞金をかけられていることを知り、懸賞金目当てで幻影旅団の行方を追います。

しかし、尾行に気付いた幻影旅団にゴンとキルアは捕まってしまいました。

↓幻影旅団メンバー信長

『HUNTER×HUNTER』10 巻より(C)冨樫義博/集英社

ゴンとキルアは無事に幻影旅団から逃げて、目当てである「G.I」を入手できるのでしょうか。

隠し金庫「木造蔵」の攻略

HUNTER×HUNTERのヨークシンシティ編で「木造蔵」の話が出てきます。

『HUNTER×HUNTER』10巻より(C)冨樫義博/集英社

木造蔵(きづくりぐら)とは

300年前に金持ちの間で流行した一種の隠し金庫。

木の箱に財宝を入れるのだが、中には持ち主がその事を忘れてしまい一度も開けられずに数百年経ったものも多い。たいていの木造蔵には総額で一億円以上の財宝が入っている。

そのため掘り出し物としては最も高額な値が付く一方、偽物を作って儲けようとする人間が後を絶たず色々な殺し技がある。

『HUNTER×HUNTER』10 巻より(C)冨樫義博/集英社

↑いろんなインチキ技があります。

この木造蔵で偽物を造る有名な技術に接合点を一度剥がしてもそれっぽく偽装する「ヤキヅケ」という手法があります。

『HUNTER×HUNTER』10巻より(C)冨樫義博/集英社

すごく流行った偽装技術であるため、鑑定者は接合点ばかりに目が向かうようになります。

そこで、盲点を突いた「ヨコヌキ」という手法があみだされました。

『HUNTER×HUNTER』10巻より(C)冨樫義博/集英社

疑心暗鬼になって注意深く検査される接合点ではない所から中身を抜き取るという大胆な手法です。

ゴンとキルアは、ヨークシンシティで転売で儲けるためにこんな知識を学びました。

抽象化して別の事例に応用

ヨークシンシティでの儲け話のあとに、ゴンとキルアは幻影旅団のメンバーに捕まってしまい、凄腕の念能力者「信長」に監禁されてしまいます。

『HUNTER×HUNTER』10 巻より(C)冨樫義博/集英社

出入口が1つしかない部屋で扉の前にいる凄腕の能力者「信長」からどうやって逃げようか必死に考えました。

ゴンは木造蔵で学んだ「ヨコヌキ」の概念を抽象化した上で、他の事例に適応させます。

『HUNTER×HUNTER』10 巻より(C)冨樫義博/集英社

そうです。出入口から出ないで「ヨコヌキ」のように壁をぶち抜けばいいのです。

『HUNTER×HUNTER』10 巻より(C)冨樫義博/集英社

「鑑定士が着目する接合点以外から宝を抜き取る」というヨコヌキの概念を見事に自分の置かれている状況に置き換えて、ピンチを切り抜けました。

ヨコヌキの概念を抽象化できなかったら機転も利かずに門番の信長と真向勝負になっていたことでしょう。

この時のゴンとキルアの取っていたメモを見てみましょう。

ゴンとキルアのメモ

ゴンとキルアのメモを見る前に、メモのフレームワークを忘れちゃってますよね。

ということで再掲。

このメモの枠組みに則ってゴンとキルアのメモを勝手に想像するとこんな感じでしょう。

このようにファクトを整理した上で、ヨコヌキを「着眼点をハズして裏をかくこと」と抽象化して本質を捉え、今の自分たちが置かれた部屋の状況に転用しました。

実際にノートにメモをして思考していたけどその部分は誌面の都合でカットされていたのかもしれません。

『HUNTER×HUNTER』で読み解く『メモの魔力』後半

後半要約:自分が何者であるかを知ろう

後半は「そもそも何のためにメモしてアウトプットするんだっけ?」という自分の内部に入っていくパートです。

この本は前半だけ読んで、後半で離脱しちゃった人多いでしょうね。

一言で表現すると「自己分析」でしょう。

なんだか就職活動の時にやりましたよね??

あの宗教じみたアレです。

『メモの魔力』は50万部以上売れているらしいのですが、後半の部分を読み切った人は10%(≒5万人)もいません(俺調べ)。

重たくてディープな後半をすっ飛ばしちゃった人の為にも私が『HUNTER×HUNTER』の力を借りて説明しますので、ザックリと理解して著者の想いだけでも汲み取りましょう。

今回、登場頂くのは『HUNTER×HUNTER』の中でもっとも強い人、メルエムさんです。

ストーリーを知らない・忘れた人のために

まずはストーリーの前提を抑えましょう。

ストーリー概要
アリと人間のハーフであるメルエムは、作品中最強の戦闘力を誇るキメラアント軍団の王様です。

『HUNTER×HUNTER』より(C)冨樫義博/集英社

メルエムにとっては強い人間(≒念能力者)は美味しい食料であり、美味しい食料を求めて隣国の東ゴルトー共和国を乗っ取りました。

美味しい食料を選別中の暇つぶしに「軍儀」(将棋やチェスに似た盤上競技)の達人コムギと勝負しました。

何度やってもまったく勝てません。

『HUNTER×HUNTER』より(C)冨樫義博/集英社

コムギとの勝てない勝負を続けていく中で、メルエムの中にこれまでにない感情が芽生えてきました。

メルエムはこのあとどのようになっていくのでしょうか。

メルエムの変化

メルエムは最初は軍儀で負けたましたが、「俺が本気出せばあいつは1秒で殺せる!!力こそ正義!!」とイキってました。

『HUNTER×HUNTER』24巻より(C)冨樫義博/集英社

その中で、虚無感を感じたのでしょう。

『HUNTER×HUNTER』24巻より(C)冨樫義博/集英社

自分は何者なのかと疑問に思うようになりました。

『HUNTER×HUNTER』24巻より(C)冨樫義博/集英社

その後、ハンター協会のネテロ会長との戦いで毒に侵されてしまいます。余命を感じ取ったメルエムは自分の中で優先順位が明確になりました。

『HUNTER×HUNTER』30巻より(C)冨樫義博/集英社

そうです、コムギと軍儀を打つという選択をします。

その時に、自分のコアに迫ることが出来ました。

『HUNTER×HUNTER』30巻より(C)冨樫義博/集英社

自分のブレない軸が見つかったこの時点がもっともメルエムが強くなった瞬間でしょう。

メルエムの自分との対話メモ

それでは、メルエムが書いたであろうメモとノートを見ていきましょう。

左側のファクトの欄には、自分の強さとコムギに勝てなかったことやなんだかよくわからないけど、楽しかったことが記載されていたはずです。

それを起点に「そもそも俺ってなにがしたいんだっけ?」「生まれてきた意味ってなんだっけ?」と考え、過去を振り返り、コムギとの軍儀を打った時間が楽しかったことを思い出しました。

そして、限られた時間をコムギとの軍儀をして過ごそうと考えるのです。

ノートを書いていたならこんな感じではないでしょうか。

著者が伝えたかった本当のメッセージ

『メモの魔力』の中で、著者である前田さんは「倒す魔王がいないのに最強の剣があっても意味がない」と仰っています。

最強のメルエムもなんとなく美味しいご飯(≒人間)を食べていたら虚しくなって目的に関して考えるようになりました。

メルエム
メルエム

余は、うまい飯を食うだけの家畜じゃない。

 

そもそも余が生きる目的ってなんだっけ?

 

どんなに表面的なテクニックを磨いても(強くなっても)、自分のコアを理解してアイデンティティーを持たないと意味ないからな!!それを見つけろよ!!

 

著者が伝えたかった本当のメッセージはきっとコレでしょう。

ただ、これを全面に押し出したら本は売れないので、本のタイトルをキャッチーにして、マッチョなメッセージは後半に持ってきたというのは編集の妙技ってやつですね。

妙技(みょう‐ぎ)
すばらしいわざ。非常にみごとな技術。
例文「柔道の妙技を競う」
出所:デジタル大辞泉(小学館)

まとめ:メモを起点に思考を広げよう

『HUNTER×HUNTER』より(C)冨樫義博/集英社

『メモの魔力』というタイトルですが、内容はアウトプット術の本でした。

目の前で起こったこと(ファクト)を起点に抽象化を行い、本質部分を抜き出して、その結果を転用するという『メモの魔力』の正体が実に『HUNTER×HUNTER』でしたね。

『HUNTER×HUNTER』をある側面から見るとバーバラ・ミント的なピラミッドストラクチャーになりますし、違った側面からみると『メモの魔力』になります。

思考訓練の題材として楽しく学べるこれ以上の作品はありません。

ぜひ、『HUNTER×HUNTER』と『メモの魔力』を読んでメモを起点にしたアウトプット術を体得してください。

以上「『メモの魔力』を『HUNTER×HUNTER』で解説する」でした。

オマケ:参考文献

抽象化思考の本

本文でも紹介した通り、メモと言いつつ、半分はアウトプット術、残りの半分は自己啓発的な自分と向き合うマッチョな本です。

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思考方法として学びたいなら本文の中でも言及されているこっちの本がオススメです。

ノート術の本

ノート術といえば、奇才、岡田斗司夫のノート術も必見です。『メモの魔力』と『あなたを天才にするスマートノート』のいいとこ取りをして自分なりのノート術を構築しましょう。

プリンシプルのない日本

後半のとっつきにくい部分は、白洲次郎を読んで頂いたほうがストレートかもしれません。

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HUNTER×HUNTER

絶対に読んでほしいもっとも勉強になる本です。優先順位的には1位です。いろんな読み方をして何度も思考訓練してください。

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